偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
じわりと額に冷や汗が滲み、心臓がバクバクと鳴っている。すぐに手を離した。
【冬哉さんと離れたくないの。ごめんね】
先のことを考えると息が止まりそうになるのを堪え、願望に近い意志をメッセージにして送る。
画面に額を付け、ギュッと目を閉じた。
私だってどうしたらいいかわからないのだ。冬哉さんの味方をしようと心を強く持っても、こうして金森家の都合も頭をよぎる。
私と冬哉さんはいつか離れる未来しかないのだろうか。
『はなごころ』と私を交換するまで、本当に解決できない問題なの?
もっと皆が幸せになれて、冬哉さんも傷つかないような方法があったらいいのに。
そんな方法があれば、私はそれにすべてを捧げてもいい。
「……なにやってる。凪紗」
──えっ。
そのとき、背後からひどく低い声がした。