偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
彼は不快感を隠さない大きなため息をつき、理解力のない私への説明を切り上げると、スマホ画面のスクロールを再開した。
部屋に掛けられた時計の秒針の音だけが鳴り、胸がズキズキと痛む。
どう思っただろう。
口に出すにはおこがましい気持ちを見られ、恥ずかしさで顔が熱くなっていく。
『冬哉さんが話してくれるまで待っていたい』だとか、『なにに悩んで、どうしてこんなことをしたのかが知りたい』とか。生意気だと思われたかな。無力で弱い私になど、一生話すつもりなんてなかったかもしれないのに。
「……ごめんなさい。こんな私で」
何度目かわからない涙を流し、膝を抱えた。
冬哉さんのスクロールが止まる。
彼はしばらくそのまま固まっていた。目を合わせることができずに表情が読めないまま、ベッドの上にポンとスマホが戻ってくる。
「え?」
返してくれた。てっきり、取り上げられると思っていたのに。