偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
キスはやがて弱まっていき、冬哉さんは表情を見せないまま、私の首もとに顔を埋めている。驚いて、「冬哉さん?」と戸惑いの声を漏らした。
「凪紗……」
久しぶりに、甘く名前を呼ばれた。どうしたんだろう。
外へ出ず、ホテルに備え付けのシャンプーや石鹸を使っているため、彼と私は同じ香りがする。
彼のふわりとした髪が頬を掠め、愛しさが溢れだした。
好き。冬哉さん、好き。
なにをされても、この気持ちが消えることはない。
背中に手を回して抱き合いたかったが、受け入れてもらえているのか自信がなく、そのままの状態を保った。
しばらくして、冬哉さんはゆらりと離れ、目が合わないまま背を向けられる。
「……明日、どうしても仕事で顧客に会わなきゃならなくなった。代わりに本村がここへ来る」
「は、はい」
「悪い。少し、寝る」
そう言い残し、彼は部屋を出ていった。