偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─

……今、謝られた?
よく意味が理解できなかったけれど、切ない言葉に胸が締め付けられた。

本村さんから聞いてくれということは、私が冬哉さんの過去を知ることを許してくれたのだろうか。知ってもいいのかな。ずっと知りたかったこと。

「……驚いた。今の、冬哉が言ったのか?」

本村さんの問いかけには返事ができないまま、私は扉を見つめ、涙がこぼれた。

やっと冬哉さんを知ることができる。それはきっと悲しく切ない過去なのではないか。聞く前から、彼の背中が物語っている気がしたのだ。

本村さんに背を押され、ソファへと並んで腰かける。

「さて、と。冬哉からお許しが出たから、凪紗さんには話すよ。俺しか知らない、冬哉の過去をね」

「……はい」

しっかり聞こう。今度こそ、わからないままにするのはやめて、向き合おう。
泣きながらも強い気持ちで「お願いします」とつぶやき、本村さんを見つめ返した。

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