偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
「あーもう、泣かないで」
慰められるほど、叫びだしたい気分になる。
私がどんな言葉をかけようと独りよがりだったのだ。冬哉さんを好きで、なにがあってもそばにいたいという気持ちさえ、彼を追い詰めてきたに違いない。
「部屋にハンカチある? 涙が全部出るまで、思う存分泣いておいでよ」
あまりに泣き止む気配がないからか、本村さんは手を取って私を立たせた。エスコートされながら部屋に入り、ドアを閉めてひとりきりになる。
私は崩れ落ちてベッドにしがみつき、マットの中に顔を押し込んで泣き叫んだ。
「うううっ……ううっ……」
私が一番、冬哉さんを苦しめる存在だった。
どうして今まで気づかなかったの。
そう思ったときだった。膝立ちでベッドにもたれている下半身に妙な感覚が走った。
「……えっ」
嫌な予感が止まらない。私はおそるおそるスカートの中に左手を入れ、ショーツに触れる。
「嘘……」
覚えのある、この感覚。
「うっ……うううっ……そんなぁっ──」
私は妊娠していなかった。