偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
【無茶言うなよ】
【手記と交換でないのなら、私はなにがあっても家に帰らないから。お願い。アキトくんにしか頼めないの】
無心で文字を打っていると、ドアがノックされた。
「凪紗さん?」
「は、はいっ」
驚いて肩が上下し、スマホが手の中で滑る。しかし鍵をかけていたことを思い出して深呼吸をした。
「大丈夫? 落ち着いた?」
「はい。すみませんでした」
「ねぇねぇ、じゃあさ、お昼はどこか外に連れていってあげるよ」
本村さんの声は陽気に変わっていく。
「え? 外……ですか?」
「だってこんなところに引きこもってたら気分が暗くなるだろ? 」
勝手にそんなことをしていいのかな。逃げるつもりなんてないけど、私を外に出すなんて。