偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─

「凪紗さんにとっては今日がこの生活の最後の日になるし、もしかしたら俺と会うのも最後かもしれない。思い出作りにちょっと出掛けようよ」

ドアの外から聞こえる声に少し哀愁が混じり、私も胸がチクリと痛んだ。
今日で六日目、明日が期限の日。本村さんと会うのが最後ということは、もちろん、冬哉さんと会えるのも最後になるのかもしれない。

本当に、終わってしまう。今日くらい最後に冬哉さんと一緒に過ごしたかったが、それも叶わなかった。

「わかりました。準備しますね」

精いっぱいの明るい声で返事をし、手元のスマホと向き合う。
ちょうど振動し、アキトくんからの返信が来たところだった。

【なんとか製法の手記を手に入れる。俺が届けるから、部屋番号を教えろ】

【これから出掛けるから、GPSで追ってきて。アキトくん、ありがとう】

冬哉さんの隠れ家は教えない。私はきっと、もうここへは戻らないから。
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