偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─

「……冬哉さん、つらかったと思います」

「きっと、アイツはこのままにはしないはずなんだ。凪紗さんと自分の子を一生見て見ぬふりはできないよ。そんな無責任な人間じゃない。今は意地になっているだけだから、なんとか説得してみせる。復讐が済めば、凪紗さんとはなんの(しがらみ)もなくなるんだから」

「……はい」

「凪紗さんはなにがあっても冬哉を信じていた。アイツはそれに救われてたよ。凪紗さんのことは信用してる。冬哉を許せとは言えないけど、全部終わったら、今度こそ本当に恋人同士になればいい」

本村さんの熱量を感じ、冬哉さんには素敵な友達がいるのだとわかって頬が緩んだ。
そんな私に、本村さんも「ね?」と笑いかける。
安心はしたが、心に一枚の膜が張っているかのようにこちらの決意は変わらなかった。

本村さんと私の望みが、冬哉さんの幸せに繋がるとは限らない。今までの独りよがりから覚めた私にはもうわかる。
冬哉さんが新しい人生を歩むために、金森家の因縁から解放してあげなければならない。
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