偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
スマホを探り当て、震える手で画面を目の前に持ってくる。
アキトくんから二十分前にメッセージが来ていた。
【手記は手に入れて、俺の手元にある。ホテルの近くのレストラン『アルカンジュ』にいるよな? 今から向かう】
アキトくんがここへ向かっている。
土地勘がないからわからないけど、本社からここまでどれくらいの距離だろう。
【着いたぞ。店の前に停めてる】
ヴー、と手の中で震え、リアルタイムでメッセージが届いた。
【今行く】
私はそう送り、急いでスマホをしまう。
周囲に注意を払いながらトイレから出ると、レストラン会場ではなくエントランスの外へと小走りで抜けた。
開け放たれている扉をくぐり、三段の階段をパンプスでかけ降りる。
お店の前には歩道すれすれまで寄せられた、アキトくんの黒のワゴン車が停まっていた。