偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
偽装懐妊








予定より早く打ち合わせを終え、事務所を出てホテルへ向かった。
本村と凪紗はどうしているか一抹の不安を抱きながらも、どちらも裏切るような真似をする人間ではないため、胸騒ぎは杞憂だと息をつき、ハンドルを切る。

──もし明日、金森製菓が俺の望む結論を出し、すべてが終わったら。
俺と凪紗は二度と会うことはないのだろう。

こんなことをしておいてまた会えるはずがない。交際を続けるなんて論外で、事務所に来ることも、秘密で会うことも、きっとない。

明日が来てほしくない、なんて思うのはおかしいのだろうか。
すべて俺が望んだ結末なのに、喪失感はこれまで生きてきたどの瞬間よりも大きい。

凪紗はまだ泣いているのだろうか。
笑っていてほしい。俺みたいな男とは決別して、立ち直って、幸せに暮らしてほしい。
凪紗にはきっといい男が現れる。騙されやすいけど大丈夫だ。あんなに正直でまっすぐな凪紗が、幸せになれないわけがない。
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