偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
「ん……」
オフィスの中の一室、彼の仕事の図面が広げられたデスクに寄りかかり、私と冬哉さんは濃密なキスを交わす。
下手くそな私は正しく出来ているのかわからないが、長いキスを終えて唇を離したときの彼は余裕を感じさせながらも高揚した表情に変わっていた。
「冬哉さん……」
私たちはいったん体を離し、熱を鎮める。
「……これ、〝はなごころ〟?」
冬哉さんは骨抜きの私が今にも落としそうに持っていた風呂敷を下から支え、尋ねた。
「そうです。皆さんと召し上がってもらえたらと思って」
「いつも悪いな」
彼は風呂敷から出して詰め合わせの箱をデスクの上に置くと、 また私を引き寄せ、体を近付ける。
再び満足いくまで、何度でもキスをする。
「……お仕事終わるのは、何時ですか」
合間にそうつぶやくと、彼は困ったように笑う。
「ごめん。夕方。六時かな」
そっか。じゃあ、この休憩時間が終わったら、もう今日はおしまいだ。