偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
手に持っていた軽いハンドバッグがポトンと落ち、熱くなっていた私の胸は冷えていく。
「え……?」
予想していなかった言葉に、感情よりも先に涙が流れた。
「好きじゃ、ないんですか……?」
私の涙を見た冬哉さんは焦った顔に変わり、すぐに「ごめん」と口にしてから、一メートルの距離を詰め、私の頭をなでる。
「泣くなよ。嘘に決まってるだろ。好きだよ」
「ビ、ビックリしました……」
「ごめん、少しいじめすぎた」
心に刺されたような痛みが走ったのに、抱き締められると消えていく。単純な私は「好きだよ」と訂正された言葉がうれしくて、彼の腕の中で笑顔に戻った。
しかし結局、冬哉さんは、私の質問に答えてくれなかった。
思い返せばこれがサインだったのかもしれない。
私はこのとき、彼の言葉の意味を、ちゃんと考えるべきだったんだ──。