偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
「冬哉さんっ……」
冬哉さんが好き。もう二度と、離れたくない。
彼は私の腕を手繰り寄せ、すがりつくように「凪紗、凪紗」と囁きながら抱き締めてくれた。
両親の前なのに、私たちは構わず愛を確かめる。私は見せつけていたのかもしれない。私たちは、誰にも引き裂けない。
お父さんにも、それをわかってほしかった。
「……そうか、わかった。なるほど。復讐を計画しながらも、凪紗のことは大切にしたかったと、そういうことなんだな。八雲くん」
「……はい。社長には顔向けできないほど、取り返しのつかないことをしました。なんとお詫びしたらいいかわかりません……でも、俺は、凪紗が好きです。それだけは、どうにもできそうにないんです……」
「……そうか」
頭を押さえて悩む父に、母は「あなた」と明るく声をかける。
私は願いを託して見つめ、そして父はうなずく。
「わかった。……八雲くん。凪紗。初めからやり直しなさい。これからは正直に、隠し事のないお付き合いをするといい」
「お父さん……!」