偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
袋から白い箱を取り出し、キッチンのカウンターに置いた。
一緒に上から覗いて箱を開けてみると、さらに木箱が入っている。
木箱の一面をスライドさせ、中身を覗いた。
「……壺?」
小さな花瓶ほどの大きさの、水甕の形をした壺が現れ、システマチックなキッチンに突如として歴史を感じる品が迷いこんだように佇んでいる。
「すみません。おじい様、自分が好きなものは他人も好きだと思い込んでいるところがあって。お祝いには陶器を贈ってくれるんです……」
「そう、なんだ……」
彼のひきつった顔には「いらねー……」と書いてあるようだ。
なんだかおかしくて、クスッと笑みがこぼれた。
「ふふ、今回だけ、もらってあげて下さい。おじい様なりに、冬哉さんと仲良くしたいと思って歩み寄ろうとしているんです」
「本当に? カメラとか仕込んであるんじゃないか?」
「もう、そんなはずないですっ」
彼は眉をひそめながら本当に壺の中を確認し始めたため、私は肩を叩いてそれを止めた。
壺のせいで、ふいに距離が近くなる。彼の綺麗な顔が目の前にあって、なぜだか恥ずかしくて顔を背けた。