偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
冬哉さんとお付き合いを始めて、もう九か月になる。
そして私は二十三歳。本当は、キスの先だって経験してみたい。
たくましい冬哉さんの体に自分の体をくっつけ、切なさをこらえる。こうして服越しにしか冬哉さんに触れられないのが焦れったくてたまらない。
結婚するまでダメだなんておかしな決まりは無視してしまえばいいのに、もしバレたら父と母がおじい様に叱られるのだと思うと、踏ん切りがつかずにいる。私は昔から隠し事が下手だから。
それに冬哉さんも、『凪紗の家にそういう決まりがある以上、許しをもらえるまでは勝手にできない』と手を出そうとしないし。
それは冬哉さんが優しいからだってことは、わかってるけど……。
「……ん、凪紗。ここまでにしよう」
はしたなく脚を絡めようとした私を、彼は肩を押して戻す。
終わりにされたのが寂しくて眉尻を下げながらうつむくと、彼は慰めるように頭をなでてくれた。
「冬哉さん……」
どうにもならない歯がゆさを甘える視線で伝えると、彼は最後にチュッと軽いキスを落とした。
はやく、冬哉さんのものになれる日が来ますように──。