偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
「別荘の改装祝いに寄ったんだよ」
おじい様はおそらくご祝儀と高級な陶器の入った紙袋を「ほれ」と私に受け取らせ、玄関を上がり足袋のままスリッパに履き替える。
「おじい様、お約束はされていましたっけ? 今日はこれからお客様がいらっしゃるのですが……」
「かまわんかまわん。急に思い立ってな、和室で茶でも飲んでゆっくりしてくわい」
そんなのこっちは困る! 冬哉さんが来るのに!
しかし門前払いにはできずあたふたする私の横を通り過ぎたおじい様は、慌てて駆け寄ってきた父と母にも「祝いを持ってきた」と悪びれる様子なく告げ、我が物顔で客間のソファに腰を下ろした。
「ほれ美佐子、茶を淹れてくれんか。達馬くん、会社はどうだね」
美佐子は母、達馬は父の名前である。
母が「お父さん、いらっしゃるなら前もって伝えてください」と控えめに注意するが、おじい様は「客人が来たら席を外すわい」とふんぞり返り、反省の色はまるでない。