偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
「──うううっ……」
潰れそうなうめき声とともに、ついに涙がこぼれ落ちる。
この場にいる全員がピタリと止まった。
私の涙に気づいたおじい様が声色を変えて「な、凪紗?」と様子をうかがってくる。続いて父も母も同じように私の名前を呼んだ。
表面的な心配をされたところでもう私の心は埋まらない。そのとき──。
頭上で、私だけに、冬哉さんのため息が聞こえた。
苛立ち、呆れ、諦め。そのため息にはさまざまな感情が含まれている気がして血の気が引いていき、おそるおそる顔を上げ、彼を見た。
冬哉さんは厳しさとも切なさともとれる、複雑な表情を浮かべている。
「……冬哉さん?」
「凪紗。すごく残念だ」
「……え?」
「交際は終わりにしたほうがいい。凪紗のためにもね」
彼の言葉に、私の頭は真っ白になった。
「な、なに言ってるんですか……?」
冗談ですよね、とつぶやこうとしたが、彼のまっすぐな瞳を見れば聞くまでもなかった。
──本気だ。