偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─

『交際を終わりにする』という言葉の意味を、一瞬でいろんな方向から考えを巡らせた。いくら考えても、別れるという意味以外になにも思いつかない。

父と母の「そんな。八雲さん」と慌てふためく声がしているが、私の脳内はそんなものではなく、ぐるぐると歪み、なにも耳に入ってこなかった。

冬哉さんの隣で、彼をものすごく遠くに感じながら、立っていられないほどの絶望感に襲われる。気を抜けばフッと倒れてしまいそうだった。

私の呼びかけには返事をしてくれないまま、彼はおじい様に向けてだけ口を開く。

「凪紗さんとふたりきりで話す時間をいただけますか。決して短い付き合いではありませんでしたから、きちんと彼女が納得できる形で終わりにすべきです。別れを惜しむ時間くらいはいいでしょう?」

〝終わり〟? 〝別れ〟?
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