偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
「……よかろう。これっきりだからな。ほれ凪紗、この男は納得しておるようだ。さっさと話をつけて来るがいい」
なにも考えられない。もう、おじい様の言葉に腹を立てる余裕もなくなっていた。
傍らで取り乱し続ける両親に冬哉さんは会釈をした後、私の頭に手を置き、「行こう」と玄関へ促す。
「こちらで話し合いますから、どうか考え直して」と最後まで冬哉さんを引き留めていた父と母。しかし、もうなにも冬哉さんには響いておらず、すべてが遅かったのだと彼を纏う冷たい空気で伝わってきた。
なにが起きているのかわからず、私はただ放心し、絶望に包まれていく。
言われるがまま、力なく彼の背中を追いかけることしかできなかった。