偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─

釈明の言葉と、手の力強さを感じ、やっと、彼にはなにか考えがあったのだという安堵が湧き上がってきて、目もとがじんわり潤みだす。

「こんなところに連れてきてごめん。人目につきたくなくて。……こういうところは初めてか?」

「は、はい……」

「だよな。大丈夫、ちゃんとこれからの話をしたかっただけだ。凪紗と俺が、交際を続けていくための」

信じていた。でも、言葉にされるまでは不安だった。

いつもの冬哉さんに戻ったのがうれしすぎて、ついに彼を見つめたまま涙がポロポロこぼれてくる。

「不安だったよな。ほら、おいで」

肩を抱かれ、引き寄せられた。

「うううっ……うっ……」

感情とともに抑えきれない泣き声を、ポン、ポン、と規則的に肩を叩き、慰めてくれる。

あったかい。すごく安心する。
まだ別れると宣言されたときのショックが乾いた傷口みたいに残っているけど、こうしていると、忘れられそうだ。
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