偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
指で顎を持ち上げられ、甘く唇を奪われながら、目を閉じた。
きっと慰める意味のキスだ。受け入れて、身を任せる。
反対の親指で涙を拭ってもらいながら、キスはゆっくり激しさを増していき、しだいについばむように弱くなっていった。
やがて唇が離れ、今度は額をくっつけて見つめ合う。
「凪紗が欲しいんだ。認めてもらえなくても、手放したくない」
「うれしい……。私もです」
ロミオとジュリエットのような情熱を体感した。誰も私たちを引き裂けない。おじい様に反対されて傷ついたはずが、まるでそれが恋心に火をつけられたように燃え上がっている。
「俺、強行手段に出てもいい?」
悲劇のヒロインにでもなったかのように酔っていた私は簡単にうなずくところだったが、ふと止まった。
冬哉さんの言葉の意味がわからず、パチパチと瞬きをして「どういう意味ですか?」と尋ねる。彼の瞳はいつになくギラギラと野性的だった。
「金森家が交際を認めざるを得なくなる方法が、ひとつだけある」
彼は私の腰に手を回し、少し持ち上げた。
「そ、それって、なんですか!?」
その方法とやらが気になり気持ちが前のめりになったせいで、彼に導かれるままベッドへ移動していることに違和感がなかった。
「あれ?」と異変に気づいたのは、すでに体がベッドの上に押し倒され、ネクタイを緩めながら私に覆い被さる冬哉さんが目の前に現れたとき。