偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
彼の薄い唇が滑らかに動き、
「凪紗が俺の子を妊娠すればいい」
という冷静な言葉が、静かな部屋に響いた。
「……え?」
意味は理解できる。しかし、まるで頭の中に染み込んでいかなかった。私の上にいる冬哉さんは、今まで見てきた中で一番、挑発的な色香を漂わせていた。
私は反射的に、お腹を押さえる。動揺で喉もすごい音を立てた。
「冗談、ですよね?」と口角をピクッと震わせ、微笑んでみる。冬哉さんはたまに冗談を言うから「そうだよ。ビックリした?」と答えてくれるかと思ったが、
「こんなこと冗談で言うわけないだろ。もう、俺たちはこうするしかないかなって」
まるで諭すようにそう言うから、私は、もう一度「え……」とつぶやいた。
「ここに」
「ひゃっ……!」
今度はビクンとわかりやすく体が跳ねる。冬哉さんが手のひらを横にして、私の下腹部に押しあてていた。
「ここに俺の子を身ごもれば、俺たちは他人じゃなくなるってこと」