偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
〝最後〟って?
「……と、冬哉さん? あの、今よく聞こえなかったんですけど」
聞き間違いに違いない。
冬哉さんは枕元に四つ折りに置いていたネクタイに手を伸ばし、襟に回しながら首をかしげる。
「妊娠しなかったら、会うのは今日が最後。そういう話だったよな」
冷や汗が背中を伝う。
どうして当たり前のような顔をして、そんなことを言うの。
「……いえ、そんなお話はしてなかったと思いますけど」
絶望で開ききった瞳を冬哉さんに向けながら、首を横に振った。冬哉さんは受け止めるようにうなずき、ネクタイを結び終えてから私を見つめ返す。しかしそれは、考えを変えてくれたとはとても思えない空気を纏っている。
「そうか。理解できなかったか? 交際を認めさせるには俺の子を身ごもるしか方法はない。逆に言えば……」
「そんなの一回じゃできないかもしれないじゃないですか! 冬哉さんも言ってたでしょう、運だって! 何回も挑戦しましょうよ! 赤ちゃんができるまで!」
私の叫びは、涙でいっぱいだった。