偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
どうしてこんなことになってしまったのだろう。妊娠しなければ二度と会うことはないなんて、それなら初体験などしなくてよかった。私を愛してると言いながら、手離そうとするのはどうして。わからない。
冬哉さんとの間に越えられない壁を感じながら、それでもどうしたってこの気持ちを止めることはできない。
「一緒にいたいです……別れたくない……」
つぶやくと、涙でグシャグシャの顔を抱き抱えられ、「俺もだよ」とささやかれた。
やがて私は、もう無理なんだと悟り、なにも言えなくなった。
自分の言葉は無力だ。彼の決意の前では、風に飛ばされる枯れ葉のようなものだと思い知った。
どのくらいこうしていただろう。私はやがて涙が乾き、放心し、心も体もなにも感じなくなった。
ただ、私が今まで見ていたものすべてが、虚像だったということ。
冬哉さんのことをなにもわかっていなかったのだという悲しみだけが、彼を受け止めたお腹の中でジクジクと痛むだけだった。