偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
「そんなっ……」
「創業以来の看板商品ですから、すぐには決断はできないでしょう。一週間、考える時間を差し上げます。その間、凪紗はこちらが引き取ります」
抱かれている手に、強い力を込められる。私の体は、容易に彼に身を預ける形となる。
「引き取るだと!? ふざけるな……! こんなことは誘拐だ! 凪紗、早くこっちへ来るんだ!」
足を痛めたらしいおじい様は、這いつくばって私に手を伸ばす。
この数秒後、おそらく、父と母が土間に降り、力ずくで私を冬哉さんから引き剥がそうとするだろう。その光景が脳裏に浮かび上がった。