偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
軟禁生活
車で、十分ほど走っただろうか。住宅地からすっかり街の景色に変わっていた。
外はおそらく都会の喧騒に包まれているはずだが、密閉された車内では冬哉さんの操るサイドブレーキとウインカーの音がするだけだった。
彼には、なにも聞けずにいる。なぜなら、私が「どうしてあんなことを?」と尋ねたところで、答えてくれるとは思えないからだ。話す気がないのだと思う。今は口を開いてくれる気配すらない。
説明してくれるつもりがあるなら、この車の扉が閉まった段階で、すぐに「驚かせてごめん、実は──」と切り出してくれたはずだ。
いや、それすらもよくわからない。
普段の冬哉さんならどうするかを考えたところで、どこまでが本当の冬哉さんだったのか、今となってはすっかり見失っている。