偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
復讐と葛藤
閉ざされたベッドルームから、凪紗のすすり泣く声が聞こえている。
聞き苦しいその声を背中に感じながら、やっとここまで来た、と目を閉じた。
俺は金森家からすべてを取り返すこのときを、ずっと待っていた。
──始まりは、何年も前に遡る。
俺が五歳のとき、両親が交通事故で死んだ。
当時の記憶はあまりないが、母の笑顔や父の声はよく覚えている。
葬儀が終わり、もともと母との結婚に反対だった父方の親族は俺を引き取る気がなく、母の弟にあたる叔父夫婦の家に引き取られることになった。
祖母の家に行くはずだったが、高齢の祖母に子育ては難しいのではと危惧した叔父が、わざわざ名乗り出たらしい。
叔父夫婦は、最初のうちは母の死の悲しみを俺と分かち合ってくれ、『本当の親だと思っていいんだよ』と同情を見せた。
しかし彼らの本当の子どもができた途端、俺の存在は容易に邪魔者へと変わっていった。