政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています

「俺、思ってたよりしろちゃんがお気に入りみたい」

　くしゃっと子供のように笑った顔を間近で見て、自分が同じ気持ちだと気づかされる。

「駅まで手ぇ繋いで帰るか」

「……うん」

　強がらなくていいらしいから、秋瀬くんの手を素直に握っておいた。駅までの道を歩きながら、きゅっと指先に力を込める。

「ねえ、ドルチェの企画で思いついたことがあるの」

「んー？」

「会社に戻ったら、ちゃんとまとめるから話そう」

「いいよ。またキスしてくれるなら」

「それは嫌」

　素直になったつもりがなりきれず、反射的に答えた私を秋瀬くんが笑う。

　ふたりきりの帰り道はくすぐったくて、ドキドキして、駅までの道がもっともっと長ければいいのにと心から願った。