政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 はい、と言いかけて首をひねる。今まで葉鳥さんからそんなふうに言われたことはなかった。疑問を覚えて尋ねてみる。

「データには気を付けますけど……なにかあったんですか?」

「まあ、ちょっといろいろと」

 葉鳥さんは苦笑すると、周囲をちらっと見まわして声をひそめた。

「ふたりは大丈夫だと思うから言うけど、どうもうちのデータが他社に……La seule fleurに流れてるみたいなんだよ」

「えっ」

 つい先日、ひと悶着あったばかりの会社だ。まだなにかあるのかと背筋が冷える。

「どうもそういうのが続いててさ。しかもこの間ちょうど、産業スパイの話を聞いちゃって。La seule fleurさんがやってるとは思いたくないけど」

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