政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 頷いて同意を示しておく。パクリ騒動の次は産業スパイなんて悲しい。La seule fleurの社長は私の憧れなのだから。あんなに素敵なデザインを作る人が、卑怯なことに手を染めているとは思いたくない。

「どこも殺伐としてますね」

 重くなりかけた空気を取り払ったのは、やっぱり秋瀬くんだった。私の頭にぽんぽんと手を置いて、「先に戻ってる」と立ち去る。

 なんだかその背中に違和感を覚えた。



 でも、どうやら杞憂に過ぎなかったようだ。

 その夜、秋瀬くんは私を飲みに誘った。といっても、みんなで行くような居酒屋ではなく、ちょっといいレストランだ。

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