政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 柔らかな笑みを浮かべると、秋瀬くんは私の頬を両手で包み込んだ。

「で、俺は家でしろちゃんをいじめることにするよ」

「その呼び方、嫌」

「じゃあ、真白」

 心臓がどきりと高鳴ったのとほぼ同時に口付けられ、唇の間に舌を差し入れられる。びくっとして離れようとしたけれど、頬を手で固定されていた。

「前から思ってたけど、真白ってめちゃくちゃかわいい名前だよな」

「なのに、しろちゃんって呼んでたの?」

「照れるから呼べなかったんだよ」

 思いがけないところであだ名の真実を知り、胸がきゅんと疼く。

 からかうために、わざと子供っぽい呼び方で意地悪をしているのかと思いきや、純粋に好きな子の名前を呼べなかっただけだとは。

「秋瀬くんって、本当に私が好きなんだね」

< 187 / 342 >

この作品をシェア

pagetop