政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 私はというと、公私混同しないよう意識しているからこそ、迫られると必要以上にどぎまぎしてしまう。秋瀬くんが夜になるとどれだけ優しく触れてくるか知ったせいで、会社でも囁かれると身体が熱くなった。

「ふーん?」

 秋瀬くんはくくっと喉を鳴らして笑うと、空いた片手で私の顎をそっとすくい上げた。

「じゃあ、逃げればいいのに」

 キスをしてほしいと心のどこかで願ってしまったのを見抜いたように言うと、秋瀬くんはちゅっと私に口付けた。

「もっかいする?」

「し、しないよ」

「監視カメラに映ってるから?」

 そう言われてはっと顔を上げる。エレベーターの天井付近、ドア側の角にはカメラがある。

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