政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 慌てて秋瀬くんの肩を押しのけようとして、その手を掴まれた。

「秋瀬くんっ」

「俺の陰で見えないよ、どうせ」

「なにをしてるかは見えるでしょ」

 エレベーターの中で男女がひとりずつ。しかも夫婦だ。夫が妻を壁に押し付け、カメラの視界を遮るように身を屈めているとなると、もうやっていることはひとつしかない。

「昼休憩、一時間もあるんだし俺と遊ぶか」

「秋瀬くんと遊ぶくらいなら、早めに仕事に入る」

「冷たいよなぁ」

 秋瀬くんは私の唇を指でなぞると、今度はキスをせずに離れていった。

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