政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 どうして引き続き遠慮してくれなかったのか。あんまりにもくっつかれると呆れを通り越して諦めが立つ。

 そそくさと秋瀬くんも部屋着を着替え、外出の支度をし始めた。

「五分経ったら行っちゃうからね」

「先に行ったら、真白の部屋に入って服の匂いを嗅ぐからな」

「なんでそういうことしようとするの!」

 意味のわからない脅しに反論すると、すっかり聞き慣れた笑い声が返ってくる。

 本当に、秋瀬くんは面倒で鬱陶しくて、ちょっとだけかわいい人だと思った。



 初めてのデートが美術館というのは、どちらもデザイナーの私たちにぴったりかもしれなかった。

「もしかして、これが見たくて来たのか?」

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