政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています

　秋瀬くんが美術館の中で配られていたチラシを見る。

　今は『ポール・セザンヌ展』をやっていた。今日から始まり、来月までの開催が決まっている。

「うん。セザンヌが好きだから」

「俺はレンブラントが好き」

「聞いてないよ」

「またひとつ俺のことを知れて嬉しいだろ」

　得意げに言うのを放置して、絵画が展示された奥の部屋へ進む。

　秋瀬くんが『光と影の魔術師』と呼ばれるレンブラントを好むのは、落ち着いたモノトーンや紺を好むところや、作る企画、デザインの傾向から理解できるような気がした。

　美術館はとても静かで、館内に流れるクラシックが心地よかった。