政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 秋瀬くんとあれこれと語るわけでもなく、並んだ絵を見ては横の解説に目を通し、また次の展示へ向かう。

 別のフロアでは通年で開かれている通常の展示もあり、そちらもついでに足を運んだ。

 手も繋がず、黙って絵を見て歩くだけ。それなのに居心地の悪さを感じないのは、なにも言わずとも秋瀬くんがこの時間を楽しんでいることが伝わってくるからだろうか。

 やがて三時間ほどかけてゆっくりと見終えたあと、美術館の一階部分にあるカフェに入った。

 注文したアイスコーヒーを飲み、ほっとひと息つく。

「すごかったねぇ」

「そうだな」

 秋瀬くんもコーヒーを飲みながら同意してくれる。

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