政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 そう言った秋瀬くんはいつものように笑っていた。からかうような目の光に、少しだけ真剣な色が混ざっている。

 誤魔化さずに答えた方がいい気がして、正直に口に出した。

「結婚してたよ。だってそういう約束だったから。その辺は割り切ってたの」

「普通、結婚は好きな人とするべきだってならないか?」

「なんだろう、どうせ恋愛する予定もなかったし、あんまり考えなかったよ」

「俺じゃなくてもしてたのかー……」

 苦笑した秋瀬くんがちょっとだけ落ち込んでいるように思えた。やっぱりこの人はときどきかわいい。

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