政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 意を決して逃げ出そうとした瞬間、お腹に回った秋瀬くんの腕が私を引き寄せる。

 そしてさらに、秋瀬くんは私の耳を唇で食んだ。

「ん、ひゃっ」

 今度はさっきよりも大きな声が出た。さすがにこんな声を出せば起きていると気づかれるだろう。

 振り返ろうとした私を拒むように、秋瀬くんは耳を甘噛みしながら、手を私の寝間着のズボンへ突っ込んだ。

「あ、きせ……くんっ……」

 咎めるために名前を呼ぶと、低い笑い声が噛まれた耳をかすめる。

「もう寝た振りはやめたのか?」

「ど、して……」

「寝息が聞こえないから」

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