政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
「秋瀬くんにキスされても、別に頑張れないよ」

「じゃあ、俺にキスされるのは嫌いか。残念だな」

 彼女が俺を嫌っているなんて、これっぽっちも思っていない。それなのにあえて言う理由はひとつだけ。

「嫌いじゃないよ。嫌いじゃないけど……」

 思った通り、真白はちゃんと否定してくれた。

 欲を言えばもうひと声欲しい。嫌いじゃない、ではなく、好き、のひと言が。

「嫌いじゃないなら、なに?」

 真白に視線を合わせ、子供に問うように尋ねる。

 うつむいた真白はもごもごと口の中でなにごとか言ったあと、俺の襟を軽く引っ張った。

「好きって言わせたいなら、秋瀬くんから言って」

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