政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
短編:秋瀬くんは調子に乗りやすい
 帰宅した私は、ソファに座る秋瀬くんを――正確にはその右手を見て絶句した。

 大仰にぐるぐると巻かれた包帯は、朝見たときになかったものだ。

「秋瀬くん、それ……」

「腱鞘炎だって」

 今日の午後、秋瀬くんは半休を取っていた。病院に行くためである。

 でも私は、秋瀬くんがなぜ病院に行かなければならないのかを知らなかった。聞いてもはぐらかされ、教えてくれなかったせいだ。

 だから、腱鞘炎だと知ったのは今この瞬間ということになる。

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