政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
バッグを自室へ置きに行くよりも早く、秋瀬くんの側へ駆け寄る。秋瀬くんの隣に座り、恐る恐る右手を触ってみた。包帯を巻いてはいるけれど、ガチガチに固定しているわけではないようだ。
「どうして教えてくれなかったの?」
「怒られそうだから?」
「教えてくれなくても怒るよ」
飄々とした態度の秋瀬くんを叱り、包帯が巻かれていない指を握ってみる。
きゅ、と握り返してくれるのはいつものことだった。力が入っていないように思えるけれど、これは気のせいだろうか。そうであってほしいと願う。
「腱鞘炎って痛いよね? 大丈夫?」
「説明が難しいけど、『あっ、今は右手を使わない方がいいな』って感じ」
「どうして教えてくれなかったの?」
「怒られそうだから?」
「教えてくれなくても怒るよ」
飄々とした態度の秋瀬くんを叱り、包帯が巻かれていない指を握ってみる。
きゅ、と握り返してくれるのはいつものことだった。力が入っていないように思えるけれど、これは気のせいだろうか。そうであってほしいと願う。
「腱鞘炎って痛いよね? 大丈夫?」
「説明が難しいけど、『あっ、今は右手を使わない方がいいな』って感じ」