政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 好きだと言うのははばかられて、もうひとつ言いたかったことを伝える。

「私、秋瀬くんの作るものが好きだよ。だから本当に気を付けてほしいの」

「……うん、ありがと」

 だめだと言ったのに、秋瀬くんは私を抱き締めてきた。

 一度ぬくもりを感じてしまったら、もうだめだと言えない。秋瀬くんの腕の中に収まるこの感じが好きだから。これを知らなかった頃にはもう戻れないほどに。

「ついでに好きって言ってくれたら治る気がする」

 私を抱き締めながら言った秋瀬くんを見上げる。

「好き」

「即答してくれるところが好きだよ」

 唇をついばむぬくもりをやっぱり拒めずに受け入れてしまった。

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