政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 思い切り鎖骨に額をぶつけられ、さすがに俺も呻いてしまう。でも真白はとても満足そうだ。匂いを嗅がれていると考えると奇妙な気分にはなるが、本人がうれしそうに深呼吸しているならそれでもいいかと思う。

「あとね、秋瀬くんは気持ちいいから好き」

「気持ちいい?」

「ちゃんと抱き締めて」

 俺の質問には答えず、真白はむっとした顔で言う。強引に俺の腕を掴むと、自分自身の背中に回そうとした。いつもは俺が抱き締めると文句を言うくせに、酔っているときはむしろ抱き締められたがるのだから困りものだ。

 酔って体温が上がった真白は、いつもより女の匂いが強い。甘いと言うべきか、ひどく俺を誘う香りがする。

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