政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 と、不意に胸元に痛みが走った。

 見ると、真白が俺の鎖骨のすぐ下あたりに噛み付いている。

「なにしてるんだよ」

「んー?」

 ああ、もう真白は自分がなにをしているかわからないぐらい酔っている。

 以前も俺の前で泣き出すほど酔ったことはあったが、さすがにここまでではなかった。

 あむあむ、と真白が俺の肌を噛み続ける。苦笑しながらその口に指を近付けると、それもかぷりと甘噛みされた。

 それだけなら猫に噛まれた程度で微笑ましく思えたのに、真白はちゅっと俺の指を吸って、挙句の果てに舌でそっと舐めた。

 これはどう考えても誘っているだろう。

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