政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 だから、今のように真白に主導権を握られている状態は大変まずい。迫るのは好きだが、迫られるのは対応に困る。なぜなら、彼女を好きすぎて動揺を隠せなくなってしまうから。

「ちょっとだけ、水を飲んでからにしような」

「秋瀬くんが飲ませて。口移しがいい」

 水を含んでもいないのに、真白に唇を奪われる。

 俺が抱いている欲とはまったく正反対の、子供がいたずらを仕掛けてくるときにも似たかわいらしいキスだ。触れるだけ、ついばむだけ。その先は知らないとでも言うような無邪気なキス。

「真白」

 やや焦りを覚えて名前を呼ぶも、彼女を逆に頑なにさせるだけだった。

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