政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています

 しんとした部屋に響く自分の声は、心細げに震えて聞こえた。



 次の日、秋瀬くんがいなくなって二日目は土曜日である。

 なぜか朝から時間の進みが遅い。せっかくの休日だからとお昼前くらいまで寝るつもりだったのに、九時の時点でもう眠れなくなった。

 毎晩、私に寝苦しい思いをさせていたあの腕がない。

 背中を包み込んでくるぬくもりも、私とは違うテンポで繰り返される低い寝息も、今はどこにもなかった。

 ベッドに潜り込めば秋瀬くんの香りがするのに、肝心の本人がいないだけでひどく落ち着かない気持ちになる。

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