政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 不意に秋瀬くんの声が少し遠くなった。そして、また近づく。

『正親さんに笑われた』

 どうやら、秋瀬くんのそばには父がいるらしい。

『真白によろしく、だって。おみやげを楽しみにしてて。俺の分と正親さんの分とあるから』

「うん」

 一番のおみやげは、きっと秋瀬くんが無事に帰ってきてくれることだ。

 たった二泊三日の出張も寂しくなるくらい、彼を好きだと自覚させられたのがいいことなのか悪いことなのか。

 きっと秋瀬くんは調子に乗っている。でも今夜は許してあげてもいいかもしれなかった。



 その夜、私はずっと玄関で秋瀬くんを待っていた。

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