政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 そこまでする必要はないとわかっていても、すぐに出迎えたかったからだ。

 やがてがちゃりとドアが開き、キャリーケースを持った秋瀬くんが現れる。

「ただい――」

「お帰り!」

 言い切る前に秋瀬くんに飛びついて抱き締める。自分がここまで彼を求めていると思っていなかった。

「玄関で待ってるのは予想してなかったな」

 笑った秋瀬くんは私を受け止めて、うりうりと頬をつまんだ。それだけでは足りなかったのか、髪をくしゃくしゃに掻き回したり、抱き締めたり、手を握ってきたり、好き放題に触る。

「俺がいなくて寂しかったか?」

「うん」

「素直でよろしい」

 にこーっと秋瀬くんが笑う。

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