政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 秋瀬くんはその状態にあるのではないだろうか。片思いしていたらしい私と夫婦になり、本格的に気持ちも手に入れて、もう望むものがなくなった。

 だから飽きてしまったのかもしれない、と。

「秋瀬くん、お昼は空いてる? この間気になるお店を見つけたんだけど」

「今日はいいかな」

「じゃあ、夜は? たまには外で食べて帰らない?」

「早く帰って寝たい」

 秋瀬くんはやっぱり私を見てくれない。言葉だって他人のように冷たく感じるし、これまで感じていたあの馴れ馴れしさもない。

「秋瀬くん」

 立ち止まって名前を呼んでも、秋瀬くんは振り返らなかった。

 私をその場に残し、歩いていった背中を呆然と見送る。

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