政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
短編:こじらせているふたり2
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「秋瀬くん」
真白に呼ばれて足を止めそうになったものの、ギリギリのところで堪えて無視をした。
廊下の角を曲がってもまだ振り返らず、いつもはエレベーターを使うのにあえて階段へ向かう。
ここはビルの六階だ。よほどのことがなければ、ここから一階まで歩いて降りるもの好きはいない。そして今日の俺は、六階から一階まで歩いて下りたいもの好きだった。
いつも真白が素っ気ないから、不安になって朝から彼女への想いを抑え込んでみた。